※日経トレンディ2018年6月号の記事を再構成

出社前と昼休憩で1日2回、週5日通い詰めれば、いれたてのコーヒー1杯が75円。月額料金を支払うと、コーヒーが飲み放題になる「定額制カフェ」が、ここ数年増えている。

 先駆けが、東京・西新宿と飯田橋に2店舗を構える「coffee mafia」(favy)。月3000円(税込み)で来店ごとに1杯、Lサイズのクイックコーヒーを注文できる。会員はビジネスマンや近隣の住民が中心で、9割以上がテイクアウト利用という。オフィスや自宅で、缶コーヒー代わりに飲んでいる客が多い。

オフィスや家で飲むテイクアウト型
オフィスや家で飲むテイクアウト型
飲み放題のクイックコーヒーは、ホットとアイス、さらに「あっさり」「しっかり」の計4種類から選べる
coffee mafia
月数千円から気軽に使える 西新宿、飯田橋とも利用可
 東京・西新宿と飯田橋に店舗を構え、会員はどちらも利用可能。月3000円(税込み)で、Lサイズのクイックコーヒーが来店1回ごとに1杯注文できる。同Mサイズが飲み放題になる月2000円(税込み。西新宿店のみ)のプランと、スペシャルティコーヒーを除くソフトドリンクがすべて飲み放題になる月6500円(税込み)のプランも用意。低温調理肉が食べ放題になる会員制レストラン「29ON」を手掛けるfavyが運営している。
シングルオリジンで提供。消費期限は1時間
シングルオリジンで提供。消費期限は1時間
店員によるハンドドリップで、1時間以内にいれたコーヒーだけを提供している
西新宿の店内。小ぶりだが席も用意しており、バルとしてやランチ時にも利用できる
西新宿の店内。小ぶりだが席も用意しており、バルとしてやランチ時にも利用できる

 同店のコーヒーは1つの豆のみを使ったシングルオリジンで、1時間以内にいれたコーヒーだけを提供。ただ安いだけでなく、いれたての本格コーヒーが飲めるのも魅力だ。また、スペシャルティコーヒーを除くソフトドリンクすべてが飲み放題になる上位プランの他、西新宿店ではMサイズ限定の割安なプランも用意している。好みに応じた使い方ができるのは便利だ。

 会員にとって大きなメリットがある定額制カフェだが、実は店舗側にもコスト面でメリットがある。一般的に、飲食店は客が入りやすい路面店が好ましいとされるが、定額制の場合は会員にとってすでに店が目的地化しているので、奥まった立地でも客に足を運んでもらいやすい。favy取締役の米山健一郎氏は、「雑居ビルの空中階など、比較的賃料の安い“二等地”でも売り上げに与える影響はさほど大きくない。また、来客のピークタイムも読みやすくなるので、コーヒーの消費期限を1時間にしてもロスが少なく、営業時間も効率化できる」と言う。

夜も使える! アルコール割引に、充実の食事
 月3000円、6500円の会員なら、夜メニューのビールとハイボールが、通常400円のところ280円(いずれも税込み)になる。また、厨房を備える飯田橋店では天ぷらを提供する他、2店とも低温調理肉を使ったメニューを用意。「ちょい飲み」にも最適で、利用シーンの幅が広いのも魅力だ。
飯田橋店で提供している「岡山県邑久産牡蠣天ぷら」(左、200円)は、会員なら何と100円(いずれも税込み)とリーズナブルだ
飯田橋店で提供している「岡山県邑久産牡蠣天ぷら」(左、200円)は、会員なら何と100円(いずれも税込み)とリーズナブルだ

 早くも、テイクアウトとは違った魅力を打ち出す定額制カフェも登場している。昨年4月に東京・自由が丘にオープンした「Alpha Beta Coffee Club」は、1席ごとにゆとりのある店内が特徴。コンセントやWi-Fiも備えており、「平日は1~2杯の注文で数時間滞在し、仕事や勉強スペースとして活用している人が多い」(同店店長の豊田聖氏)という。月9000円(税込み)とcoffee mafiaよりは割高だが、ドリップコーヒーやラテなど5種類が飲み放題。選択肢が多い点は、1度の滞在で2杯以上頼む人には魅力的だ。

社外での仕事に店で飲む滞在型
社外での仕事に店で飲む滞在型
Alpha Beta Coffee Club
選べるコーヒーは5種類 作業に向く広々とした空間
 東京・自由が丘に店舗を構え、月9000円(税込み)でドリップコーヒーやラテなど5種類が飲み放題になる。滞在中に何度でも注文可能。1席ごとにゆとりがある店内が特徴で、コンセントやWi-Fiも備え、仕事や勉強スペースとして利用するには最適だ。レンタルオフィスだと月1万円を超えるケースも少なくないため、使い方次第では節約にもなるだろう。
シングルオリジンで提供。1杯ごとに手で注ぐ
シングルオリジンで提供。1杯ごとに手で注ぐ
1杯ごとに店員がハンドドリップしたコーヒーが飲める
暑くなるこれからの季節は、屋外に設けたテラス席目当てで来店する客もいるという
暑くなるこれからの季節は、屋外に設けたテラス席目当てで来店する客もいるという
海外のボトルビールも取りそろえ、夜の利用にも向く
海外のボトルビールも取りそろえ、夜の利用にも向く

 今年4月には加盟店ならどこでも使える定額制カフェサービスも登場。Same Skyが提供する「CAFE PASS・30 CUPS」は、スマホで会員登録をするだけで、東京都や埼玉県の複数店で利用できるのが特徴。月4860円(税込み)で合計月30杯まで飲み放題になる。加盟店は現状、都内8店を含む全国12店と限定的。だが、「年内に200店を目指す」(Same Sky代表取締役の二方隼人氏)といい、利便性の向上が期待される。

CAFE PASS・30 CUPS
複数の加盟店で使える定額サービスも登場
 今年4月からSame Skyが提供を開始した新サービス。月4860円(税込み)で、加盟店ならどこでも利用でき、月30杯まで飲み放題になる。スマホで登録すれば、購入の手続きもブラウザー上で済むので便利。加盟店側には、コストをかけずに固定客獲得が期待できるというメリットがある。
東京・下北沢にある「LIGHT UP COFFEE Shimokitazawa」をはじめ、加盟店はコーヒー1杯500円程度の個店が中心
東京・下北沢にある「LIGHT UP COFFEE Shimokitazawa」をはじめ、加盟店はコーヒー1杯500円程度の個店が中心
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